乗馬クラブで必ず行う作業の一つが「曳馬(ひきうま)」です。
しかし、この曳馬という作業は単に馬を連れて歩くだけの作業ではありません。
むしろ乗馬の世界では、
「曳馬を見ればその人の技量が分かる」
と言われるほど、馬の扱いの基本が詰まった大切な技術です。
また、人と馬とのコミュニケーションは曳馬から始まるといっても過言ではありません。
特に競走馬から乗馬に転用していく際に歩き方も変化させる必要があります。
初心者のうちは
- 馬に引っ張られる
- 馬が人の前に出てしまう
- 馬が急に草を食べようとする
- 他の馬に近づいて危険になる
- 洗い場にある水が入ったバケツに顔を突っ込む
といった経験をすることも多いでしょう。
しかし実は、これらの多くは
曳馬の基本を理解していないことが原因です。
正しい曳馬ができるようになると
- 馬が人をリーダーとして認識する
- 馬との信頼関係が生まれる
- 騎乗中のコントロールも良くなる
という大きなメリットがあります。
この記事では、乗馬現場で長年指導してきた経験をもとに、
初心者に必ず覚えてほしい「正しい曳馬の方法」を8つのポイントで詳しく解説します。
これを理解すれば、あなたの曳馬は一気に上級者レベルへ近づきます。

合わせて読むと理解が深まります!🐎
イラストでわかるホースコミュニケーションを読んでの解釈|馬が変わる10の実践ポイント【初心者必読】 | 馬と向き合って18年
目次
① 曳く位置は「馬の肩の横」
曳馬で最も重要なのは、人がどこに立つかです。
初心者の曳馬を見ていると、次のような位置に立っていることがよくあります。
- 馬の前を歩いている
- 馬の真横にぴったり付いている
- 馬の後ろから引っ張っている
これらはすべて危険な位置です。
正しい位置は
馬の肩の横
です。
なぜ肩の横がベストなのか
理由は大きく3つあります。
①馬の動きが一番見やすい
肩の横にいると、
馬の耳・首・顔の動きがよく見えます。
馬は動く前に
- 耳を動かす
- 首を振る
- 体重移動をする
というサインを出します。
肩の位置にいれば
馬の次の行動を予測できます。
予測ができれば、危険に対処できます。
逆に予測できなければ、引っ張られたり足を踏まれたりしてしまいます。
②馬に踏まれにくい
馬の真横に近すぎると
横に動いたときに踏まれる危険があります。
逆に肩の横は
安全なポジションです。
ただし、近すぎると横っ飛びした時に踏まれる可能性があります。
少し馬との安全な距離を取る方が無難でしょう🐎
③コントロールしやすい
肩の横にいると
- 前進
- 停止
- 方向転換
すべての指示が出しやすくなります。
② 馬より半歩前を歩く
曳馬の基本は
人がリーダーになること
です。
そのため、人の位置は
馬より半歩前
になります。
馬をリードしていくことが大切です。
人の振る舞いを馬はよく見ています。
毅然とした態度で馬に接しましょう😊
理想的な位置関係
理想は
人の肩
↓
馬の鼻先
この位置関係です。
このポジションを保つことで
- 人が進行方向を決める
- 馬が人についてくる
という関係が作れます。
馬が前に出る場合
初心者の曳馬でよくあるのが
馬が人を追い越す
ケースです。
これは馬が
「自分がリーダー」
と思っている状態です。
この場合は
- 止める
- 少し後ろに戻す
などして
人の横に戻す必要があります。
繰り返し教えることで少しずつ馬が理解してくれるようになっていきます。
放っておくとどうなる?
前に出る癖を放っておくと
- 曳馬で引っ張られる
- 止まらなくなる
- 騎乗でも強くなる
という問題が起きます。
実は
曳馬の段階で馬のしつけは始まっています。
ここで馬に人がリーダーであるということを認識してもらう必要があります。
嘗められてしまうと騎乗時も人の支持を聞かなくなります。
③ 曳き手の正しい持ち方
曳馬では
曳き手(リード)の持ち方
も非常に重要です。
間違った持ち方は
事故につながる可能性があります。
基本の持ち方
基本は2点保持です。
持ち方は
右手
→ 頭絡またはハミの近く
左手
→ 余った曳き手
左手の曳き手が長すぎて、地面についてしまうと馬が踏んでしまう可能性があります。
注意して持つようにしましょう。
絶対にしてはいけないこと
初心者でよくあるのが曳き手を手に巻くことです。
これは本当に危険です。
馬が急に引っ張ると
- 指が折れる
- 手が締め付けられる
- 引きずられる
という事故があります。
実際に乗馬クラブでも
よく起きる怪我の一つです。
曳き手はいつでも離せるように軽く持つようにしましょう!
曳き手の長さ
曳き手は短すぎても長すぎてもダメです。
理想は馬の頭をコントロールできる長さです。
短すぎると、馬に対しての指示が強すぎて馬が暴れたり、逆に動かなくなったりします。
長すぎると制御不能になってしまいます。
馬によっても適正な長さは違います。
それぞれの馬に合った長さで持つようにしましょう🐎

④ 馬の顔の向きをコントロールする
曳馬では、馬の顔の向きがとても重要です。
なぜなら、馬は顔が向いた方向へ動く動物だからです。
人が向かいたい方向へ常に顔を向けられるように意識しましょう。
例えばこんな場面
馬が
- 草を食べようとする
- 外を気にする
- 他の馬を見る
このとき顔を自由にすると、体もそちらへ向きます。
顔と体が他に向いてしまうということは、人に意識が向いていないということです。
人に意識が向いていない時ほど危険なことはありません。
馬が常に人の指示を待ってくれるような関係性を構築しましょう!
正しい対応
その場合は軽く曳き手を使い、顔を人の方へ戻します。
ポイントは強く引かないことです。
馬はとても敏感な動物なので、少しの合図で理解します。
これができると何が良い?
顔をコントロールできると
- 曳馬が安定する
- 馬が落ち着く
- 人に意識が向く
つまり、人に集中する馬になります。
⑤ 馬が止まったら人も止まる
曳馬では、人と馬の動きを合わせることが重要です。
例えば、馬が止まったのに人が歩き続けると曳き手が引っ張られます。
これは
- 馬の口に負担
- 馬が嫌がる
- コントロールが悪くなる
原因になります。
人と馬が相互に動きを意識していかないと、上手くコミュニケーションをとれません。
理想の動き
理想は
馬が止まる
↓
人も止まる
そして、歩き出すときは軽く前進を促します。
常に馬が人に合わせてくれるように意識しましょう。
上級者の曳馬
上手い人の曳馬は、人と馬が完全に同じタイミングで動きます。
これはとても美しい曳馬です。
これは一朝一夕でできることではないんです。
毎日毎日の積み重ねがこのような関係性を作ることができるんです。
⑥ 曲がるときは大きく回る
初心者に多いミスが、急に曲がる曳馬です。
馬は体が大きく、小回りが苦手です。
小さな回転では馬が躓いてしまいます。
できるだけ大回りで曲がるように心がけましょう。
また、大きく回ると人が足を踏まれる危険性を少なくすることができます。
人馬の安全のためにも心がけましょう。
曲がるときのポイント
曲がるときは、大きな円を描くように歩きます。
急に方向転換すると
- 馬がぶつかる
- 馬がバランスを崩す
- 人が踏まれる
危険があります。
常に馬の目線に立って、曳馬をしましょう。
特に注意する場所
乗馬クラブでは
- 洗い場
- 馬房前
- 通路
などで曲がることが多いです。
こういう場所では特に大きく回る意識が必要です。
回転できるスペースを確保できるように意識しましょう。
⑦ 馬との距離を保つ
曳馬では、馬との距離も大切です。
理想は腕1本分くらいです。
なぜ距離が必要?
馬は突然
- 横に動く
- 首を振る
- 足を踏み替える
ことがあります。
近すぎると、踏まれる危険があります。
逆に遠すぎるとどうなるのか?
遠すぎると
- コントロールできない
- 馬が自由になる
という問題があります。
⑧ 周囲を見る(人の責任)
曳馬は、人が100%責任を持つ作業です。
馬は
- 驚く
- 怖がる
- 急に動く
動物です。
様々な可能性を想定して、落ち着いて対処できるようにしましょう。
曳馬中に確認すること
曳馬中は常に
- 他の馬
- 人
- 障害物
- 音
を確認します。
馬だけを見てしまうと、急な動きに対処できません。
上手い人の曳馬
上手い人は、常に周囲を見ています。
また、
大きな音がなりそうかな?
急に人が飛び出してこないかな?
等の予測を常にしています。
つまり、馬だけではなく環境全体を管理しています。
これができる人は、完全に上級者です。

まとめ
馬の曳馬は、単なる作業ではありません。
馬との関係を作る基本技術です。
今回のポイントをまとめます。
正しい曳馬の8つの基本
①肩の横に立つ
②半歩前を歩く
③曳き手を正しく持つ
④顔をコントロールする
⑤馬と動きを合わせる
⑥曲がるときは大きく
⑦距離を保つ
⑧周囲を見る
この8つを意識するだけで、曳馬のレベルは大きく変わります。
実は、曳馬が上手い人は騎乗も上手いと言われています。
なぜなら、地上で馬をコントロールできる人は騎乗でも馬を理解できるからです。
ぜひ次に馬を曳くときは、この記事のポイントを思い出してみてください。
あなたの曳馬は、きっと今までより安全で美しいものになります。
そして、馬との関係構築も容易になることでしょう🐎
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