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「馬のせい」にしている限り、点数は頭打ちになる
競技会後、馬を曳きながらこんな会話を何度も聞いてきました。
- 「今日はちょっと集中してなかったですね」
- 「馬が固くて伸びなかった」
- 「練習ではできてたんですけど…」
気持ちは痛いほど分かります。
本番で結果が出ないと、どうしても馬の状態に理由を求めたくなります。
ですが、18年間競技を見続け、指導し続けてきて断言できることがあります。
60%前後で止まっている人の多くは、
馬ではなく“人の部分”で静かに点を落としています
しかもその多くは
✔ 本人はミスしている自覚がない
✔ 練習では注意されていない
✔ 競技独特の「評価ポイント」を知らない
つまり、
知らないまま点を失っているのです。
この記事では
「馬はちゃんと仕事をしているのに、人の判断・準備・扶助で評価を落としているケース」を
審判の目線+指導現場のリアルで徹底的に分解します。

ケース① 入場から停止・敬礼までで、すでに点を落としている
入場は「演技の一部」ではなく「評価の始点」
多くの選手が勘違いしていますが、
入場はウォーミングアップの延長ではありません。
入場=最初の採点対象です。
馬場馬術は採点競技です。
人が見て点数をつけるので、やはり先入観はどうしたってあります。
入場が堂々としていて、自信に満ち溢れたものであれば審判の見る目も期待感に満ちたものになります。
逆に、おどおどと消極的に自信なさげに入場してしまうと、審判の見る目も厳しくなります。
- 馬の集中度
- 人の落ち着き
- 調教の完成度
- 人馬の信頼関係
これらが、わずか数秒で審判に伝わります。
よくある“人のミス”
- 入場直前までバタバタしている
- 駈歩が急に速くなる
- 正面線で左右にブレる
- 停止で前後に動く
- 敬礼中に手綱が緩む・動く
これらはすべて
👉 人が馬を「整えきれていない」サインです。
審判はこう見ている
「準備が甘い」
「細部まで意識が届いていない」
この印象がつくと、
同じ内容の運動でも
✔ 厳しめに見られる
✔ 7が6.5になる
ということが実際に起こります。
改善の具体策
- 入場前の輪乗りでは「落ち着き」と「前進感」だけを確認
- 停止は“止める”ではなく“立たせる”
- 敬礼は「完全に静止 → 呼吸 → 動作」
現場ワンポイント
入場前30秒でやることを決めることが大切です。
ルーティンがある人は、入場が安定します。
右手前か左手前かどちらから入場するか。
どれぐらいのリズムで騎乗するか。
馬の癖をしっかり見極めながら、馬の悪い部分を出さずに良い部分をアピールできるように作戦を立てましょう!🐎
ケース② ウォーミングアップで馬を「仕上げすぎている」
なぜやりすぎてしまうのか
理由はシンプルです。
「本番で失敗したくない」
その不安が
✔ 確認しすぎ
✔ 直しすぎ
✔ 経路を通しすぎ
につながります。
実際に起きていること
- 身体は動いているがキレがない
- 反応がワンテンポ遅れる
- 集中力が切れている
馬は正直です。
疲れと集中力低下は、必ず演技に出ます。
審判の評価
- 推進力不足 → 6以下
- 表現不足 → 伸びない
- 前進気勢がない → 全体印象ダウン
正しいウォームアップの考え方
ウォームアップは
馬を良くする時間ではありません。
「今ある力を、課目で出せる状態にする時間」
これが本来の目的です。
できないことや苦手なことをしつこく行うのではなく、万全な状態で経路を回れるように運動をすることが大切です。
改善策
- 課目に必要な運動だけを抜粋
- 良い反応が出たら即終了
- 「もっと良くなる前」で止める勇気
僕は、普段ホームで30分運動しているのであれば、準備運動と演技含めて30分で運動を終えるように心がけています。
馬に余力がないと良い演技はできないと思っています。
人それぞれ持って行き方は違いますが、馬が持っている能力を発揮できるように事前にシミュレーションしておきましょう
ケース③ ハミ抵抗を「馬の癖」と誤解している
ハミ抵抗の正体
ほとんどの場合、原因はこれです。
- 脚より先に手が動く
- 行かせたいのに抑えている
- 手が一定でない
馬からすると
「前に行け?止まれ?どっち?」
という矛盾した指示になります。
これらのケースは結果的に馬のハミ抵抗を人が作り出してしまうことになります。
審判の見え方
- コンタクト不安定 → 確実に減点
- 緊張 → リラックス項目が落ちる
- 不調和 → 全体評価ダウン
改善の順番
- 脚で前進を作る
- リズムを一定にする
- 手は“受け止める”だけ
現場ワンポイント
「手で直そうとした瞬間に、点は下がる」
まず脚で解決できないか考えましょう。
すべての運動は「推進する」ことから始まります。
「まっすぐ推進して拳で受け止める」
これができれば最低でも6点は担保されます。
まずはそこを目指してみましょう!

ケース④ 図形運動でラインを甘く見ている
図形は「技術」より「正確さ」
巻き乗り・斜め手前替え・ハーフパス。
どれもラインが命です。
しかし多くの人が
- 馬の姿勢ばかり気にする
- 自分の進路意識が曖昧
結果
👉 図形が歪む。
その段階で馬の体勢も崩れているはずです。
図形を正確に回る→リズムが安定する→頭が安定する
結果的に点数は向上します
審判の基準
- 図形が正確 → 内容が普通でも7
- 図形が曖昧 → 内容が良くても6止まり
改善策
- 目線で進路を先に作る
- 馬を曲げる前に人が真っ直ぐ進む
- 練習では必ず目印を使う
馬の頭から通りたいラインに乗ることから始めていきましょう!
ケース⑤ ベンドを作ろうとして、逆に馬を壊している
よくある失敗
- 内手で引く
- 上体が内に倒れる
- 外扶助が消える
これで起こるのは
✔ 後肢の逃げ
✔ リズム崩壊
✔ 逆シート
正しい理解
ベンドは
脚と体重の結果として生まれるものです。
内方脚でベンドを作り、外方手綱で受ける ということを常に行いましょう。
それは蹄跡、図形に関わらずです。
改善策
- 内脚で胴を作る
- 外手で進路を守る
- 上体は常に進行方向
常に内方姿勢を作ることは重要です。
僕は輪乗りでの運動をよくしますが、内方姿勢をたくさん取れるからです。
経路中は特に内方姿勢を常に取るべきだと思って乗ってます。
ケース⑥ ミス後に「演技の質」を落としている
ノーミス幻想を捨てる
競技でノーミスはほぼありません。差が出るのはその後です。
一つミスしても、その項目が減点されるだけで後で取り戻せばいいだけです。
完璧な演技を目指すのではなく、できるだけ失敗を減らせるように乗る意識が大切です。
その方がミスをした時の気持ちの持ちようが全然違います。
審判が見ているのは
- ミス後に雑になるか
- 姿勢が崩れるか
- 気持ちを立て直せるか
一つのミスに一喜一憂せずに次の項目に集中する方がよっぽど健全です。
トータルで点数を獲得できるかが重要です。
改善策
- ミス=想定内
- 減点はもう終わった
- 次の運動だけを見る
気持ちの切り替えが何よりも大切です。
日常生活からそのマインドで過ごすことができれば、演技中もすぐに気持ちの切り替えができます。
ケース⑦ 課目の「意図」を理解していない
課目はメッセージ
課目は
✔ 馬の育成段階
✔ 人の技量
を測る設計図です。
理解せずに動作だけこなすと、評価は必ず頭打ちになります。
ジャッジペーパーに込められた経路の意図を読み込み、審判の着眼点に沿った乗り方をするべきです。
改善策
- 各運動の評価ポイントを言語化
- なぜこの順番なのか考える
- インストラクターに「課目の狙い」を聞く
いくら良い動きができていても、採点意図に沿った内容で乗れていないとそれはただの独りよがりにすぎません。
普段の練習と、競技会の経路は別物と思ってトレーニングをするべきです。
これは普段のトレーニングに意味がないと言っているわけではなく、あくまで経路で見られるポイントは違うということです。あしからず。

まとめ|馬を変える前に、まず「人」を疑おう
点が出ないとき、馬を変えたくなる気持ちは自然です。
ですが本当に必要なのは自分の準備・判断・扶助を見直すこと。
馬は、人の操作をそのまま映す鏡です。
人が変われば、同じ馬でも点は変わります。
まずは「自分が点を落としていないか」、そこから始めてみてください。
人が変われば馬も確実に変わります。
常に前進していきましょう!
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